水の消えた大河
千曲川・信濃川の減水問題とJR東日本の不正取水
信濃川中流域では、その豊富な水量と急勾配を利用した水力発電が、昭和初期から当時鉄道を所管していた鉄道院を中心に国策として行われてきました。
東京電力信濃川発電所(津南町鹿渡)は、西大滝ダム(長野県飯山市)から取水、十日町市と小千谷市にあるJR東日本発電所(千手・小千谷・新小千谷発電所)は宮中ダムから取水して発電しています。ダムで取水された水は山中に掘られた水路トンネルを通り、発電所で利用されます。
このため、上流の西大滝ダムから下流の小千谷発電所の63.5kmは、 川が干上がり、川底がむき出しとなるなる状態となりました。
JR東日本の3つの発電所で作られた電力は、県境を越えて首都圏に送られ、同社が使用する電力の約23%をカバーしています。
1982年 「信濃川をよみがえらせる会」が発足。
1984年 国鉄が信濃川沿いに新発電所の建設を発表。取水量を毎秒317トンに
引き上げることに要求し、十日町市長が水利使用に同意。1990年小千
谷市に 新発電所が完成し、毎秒317トンの取水を開始。
1998年 十日町市、川西町、津南町、中里村が、水を取り戻すことを求め、署名活
動、4万5000人を越える署名を集める。同年11月、「信濃川に水を取り戻
す総決起集会」開催。
1999年 「信濃川中流域水環境改善検討協議会」が発足。
2008年
9月 5日 |
JR東日本が、千手発電所と小千谷第二発電所の記録装置の取水量算定ブログロムに上限設定をし、不正取水していたことが発覚 。十日町市議の情報公開請求がきっかけ。 |
9月 22日 |
JR東日本が、宮中ダムから流している維持流量を算定するプログラムにも下限設定していた、と国土交通省が発表。 |
11月 7日 |
JR東日本が新潟県庁で記者会見。1998年から2007年の10年間、少なくとも1億8000万トンの水を不正取水していたことを認める。 |
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大熊孝著「川がつくった川、人がつくった川」(ポプラ社刊)より =「奔流」 第2号参照
2009年
2月13日 |
国土交通省がJR東日本の水利権取り消しを発表。不正取水量は「2002年から2008年の7年間で3億1000万トン以上」とした。 |
2月23日 | 信濃川中流域水環境改善検討協議会が維持流量を毎秒40トンと提言 |
3月 8日 | 十日町市の10団体がJRの不正取水に抗議し、緊急市民集会を開催 |
3月10日 | 水利権取り消し、宮中ダム取水停止 |
4月 7日 |
十日町市内10団体でつくるJR東日本発電取水総合対策市民協議会が初会合 |
9月 |
長野県や新潟県でサケの遡上を確認 |
11月25~26日 |
JR東日本の清野智社長が地元自治体を訪れ謝罪。十日町市に30億円、小千谷市に20億円、川口町に7億円 の拠出を表明 |
2010年
2月26日 | 「信濃川のあり方検討委員会」で、放流量は変動型の試験放流毎秒40~100トンで合意 |
3月29日 |
十日町市議会がJR東日本による水利権再申請への同意議案を可決 |
3月30日 |
十日町、小千谷同市や関係団体が正式同意。JR東日本との覚書などに調印 |
4月 2日 |
JR東日本が国(国土交通省信濃川河川事務所)に水利権を再申請 |
6月10日 |
JR東日本が信濃川からの取水再開 |
2011年
3月15日 |
東日本大震災を受け、信濃川発電所の取水制限を4月30日まで撤廃 |
出典・参考資料 十日町市ホームページ
「水の消えた大河で」(三浦英之著、現代書館)
JR東日本広報資料